無料診断
Labuan Fund Licence

ラブアンでファンドを設立する要件 — 学歴・資格・資本・実体のすべて

資金も事業計画もあるのに、申請者本人の学歴・資格要件で止まる。ラブアンのファンド設立で最も多いのがこのケースです。Labuan FSA のガイドラインの条文から、何が求められているのかを整理します。

2026年版 · 最終更新 2026年9月26日

クアラルンプール中心部のビル群

ラブアンのファンド関連ライセンスは 2 つに分かれる

マレーシア・ラブアンでファンド事業を行う場合、必要な手続きは 2 つに分かれます。ひとつはファンドそのものの登録、もうひとつは運用者 (ファンドマネージャー) の免許です。両者は別の制度で、要件も異なります。

「ファンドを作りたい」という相談の多くは、実際には両方が必要になります。この 2 つが混同されていることが少なくありません。

1. ファンドマネージャーの免許要件

Labuan FSA (ラブアン金融サービス庁) の Guidelines on the Establishment of Labuan Fund Manager は、申請者の適格性を次のように定めています。

5.1.1 An individual who holds a relevant degree or professional qualification to carry on fund management activities. Labuan FSA may also consider an applicant with at least minimum qualification of diploma holder and 3 years' relevant experiences in capital market or direct experiences in fund management activities;
5.1.2 An approved fund manager or any provider of such services from a country or jurisdiction who is a member of the International Organization of Securities Commission (IOSCO); or
5.1.3 A person who does not fulfill paragraph 5.1.1 and 5.1.2 may also be considered, provided that the fund management activities are run and managed by suitably qualified and experienced individuals.

ここが最初の関門になる

条文を読むと、原則として「関連する学位または専門資格」の保有が求められます。ディプロマ保有者の場合は、資本市場またはファンド運用の実務経験が 3 年追加で必要です。

いずれも満たさない場合は §5.1.3 により、「適格な人材が運用を担う体制」を示すことが条件になります。つまり、自分以外の有資格者を運用責任者として立てる必要があります。

条文は「degree or professional qualification」と定めています。学位に限定されていません。英国 Ofqual 認定機関が授与する Level 7 Diploma のような専門資格も、この要件に該当します。

運営上の要件 (§8.0)

項目要件
払込資本RM 300,000 以上 (損失で毀損されていないこと)。運用資産が RM 1.5 億を超える場合、超過分の 0.2% を追加
専門職賠償責任保険RM 100 万以上
事務所ラブアンに登記上の事務所を維持し、事業をラブアンで・から・を通じて行う
Fit and Proper申請者・取締役・principal officer・関係者が基準を満たすこと
監査承認監査人による年次監査 (LFSSA 第 174 条)

クアラルンプールやイスカンダルにマーケティングオフィスを置く場合は、別途 Labuan FSA のガイドラインに従います。

2. ファンド本体 (Labuan Private Fund) の要件

Guidelines on the Establishment of Labuan Mutual Funds §5.0 が、私募ファンドの定義を定めています。

5.1.1 Not more than 50 investors where the first time investment of each of such investors is not less than RM250,000 equivalent in any foreign currency; or
5.1.2 Any number of investors where the first time investment of each such investors is not less than RM500,000 equivalent

つまり、次のどちらかを満たす必要があります。

公募ファンド (public fund) は要件がさらに重く、情報開示義務も加わります。日本の事業者が最初に検討するのは、ほぼ private fund です。

情報メモランダム (information memorandum) には、手数料・費用の全額、資本と収益の分配方針、そして Labuan FSA が内容について責任を負わない旨の記載が必要です。

3. 申請から開業までの流れ

  1. 事業計画の作成 (提供サービス、対象市場、3 年間の収益予測、人員、資本構成)
  2. Form LSCM と添付書類の提出
  3. Labuan FSA による Fit and Proper 審査
  4. 承認後、Labuan Companies Act 1990 に基づく法人設立
  5. 資本の払込、保険の付保、事務所の確保
  6. 就労ビザ (Employment Pass) の申請
申請前に法人を作るのではなく、承認を得てから設立します (§5.2)。順番を逆にすると、設立費用が無駄になることがあります。

4. 就労ビザは別要件

ファンドマネージャー免許を取得しても、マレーシアに滞在するには別途 Employment Pass が必要です。Guidelines on Work Permit Application in Labuan IBFC が定める要件は次の 2 点です。

2026 年 6 月 1 日に内務省が給与基準を改定しました。Employment Pass Category I は月 RM 20,000 以上、Category II は RM 10,000〜19,999、Category III は RM 5,000〜9,999 (製造業・MRS は RM 7,000〜9,999) です。

ただし Labuan FSA の Circular No. 337/2026/ALL (2026 年 6 月 11 日) は、ラブアンの RM 10,000 基準が新しい給与スケールの範囲内に収まり、引き続き Employment Pass の資格を満たすと明記しています。ラブアンの相対的な優位はむしろ広がりました。

なお、ラブアンの通常の就労ビザには学歴の数値要件はありません。Fit and Proper 審査の competency 項目で「qualifications and experience を通じて職務を遂行する能力」が定性的に評価されるにとどまります。学歴要件が明確に効くのは、ファンドマネージャー免許の方です。

5. よくある誤解

「法人設立に学歴が必要」— これは誤りです

Companies Act 2016 の取締役要件は人数と居住地のみで、学歴要件は存在しません。Sdn Bhd もラブアン法人も同じです。

「MM2H に学歴が効く」— これも誤りです

MM2H の要件は資産・収入・定期預金で構成されており、学歴要件はありません。

「免許が取れると保証される」— そうではありません

Labuan FSA は申請ごとに Fit and Proper 審査を行います。資格の保有は要件の一つを満たすものであって、承認を保証しません。

6. 学歴・資格要件が満たせない場合

§5.1.1 の要件に届かない場合、選択肢は 3 つです。

  1. 有資格者を運用責任者として招く (§5.1.3)人材の確保と、継続的な報酬の支払いが必要です。
  2. IOSCO 加盟国のライセンスを取得する (§5.1.2)時間と費用がかかり、現実的でない場合がほとんどです。
  3. 要件に該当する資格を取得する (§5.1.1)最短のルートです。英国 Ofqual 認定機関が授与する Level 7 Diploma は、条文の "professional qualification" に該当します。実務経験を単位として認定する RPL 制度を使うため、通学も論文も必要なく、90〜120 日で取得できます。

※ 免許の可否は Labuan FSA の審査によります。資格の取得は要件の一つを満たすものであり、免許の交付を保証するものではありません。

まとめ

項目要件
運用者の資格関連する学位または専門資格 (ディプロマ + 実務 3 年でも可)
払込資本RM 300,000 以上
賠償保険RM 100 万以上
私募ファンドの投資家50 名以下で各 RM 250,000 以上、または人数制限なしで各 RM 500,000 以上
就労ビザ月収 RM 10,000 以上 (2026 年 6 月改定後も据え置き)

ラブアンでのファンド設立は、資本要件そのものより、運用者の資格要件で止まるケースが目立ちます。事業計画を作る前に、まずご自身が §5.1.1 を満たすかを確認されることをお勧めします。

出典